歓迎のことば

大会名誉会長 朝日大学 学長 大友 克之

 このたびは、岐阜県瑞穂市の朝日大学において「日本コーチング学会第35回大会」を開催させていただくことになりました。全国から学会員の皆様をお迎えできることを大変光栄に思いますと共に心より歓迎いたします。
 朝日大学の教育理念は建学の精神「国際未来社会を切り開く社会性と創造性、そして、人類普遍の人間的知性に富む人間を育成すること」にあります。時代のニーズに即した専門的かつ実践的な教育を行い、学生個々の知識と行動力を高めることで、国際未来社会に貢献し得る人材を養成する大学を目指しております。
 また、本学は2002年から活動して参りました体育会活動と併せて、トップアスリートの育成と学校教員を含むスポーツ指導者の養成に取り組んできました。2012年に岐阜県で開催しました「ぎふ清流国体」に、本学の多くの学生・卒業生・教職員が競技者・運営スタッフ・ボランティアとして参画し、大会の原動力として寄与することができました。その後、2017年には、開学以来有してきた地域における医学・歯科医学・看護学といった医療系の資源と体育学を融合させた保健医療学部健康スポーツ科学科を開設しました。
 こういった活動の成果として、2012年開催のロンドン五輪に初めて本学卒業生が出場したのを皮切りに、2021年開催の東京五輪には卒業生が複数名出場を果たし、それぞれ入賞を果たしております。
更に、本学内に設置した総合型地域スポーツクラブ「(公社)ぎふ瑞穂スポーツガーデン」からも、2016年リオデジャネイロ五輪において金メダル選手を輩出することができました。UNIVAS(一般社団法人大学スポーツ協会)には立ち上げの段階から参画をし、大学スポーツの在り方を再検証する一員として加盟しております。このように朝日大学は五輪レベルのトップアスリートの育成と支援から、地域に開いた生涯スポーツ振興まで、岐阜県及び国内外におけるスポーツ界の発展に貢献しております。
ところで、日本コーチング学会の会則において「体育・スポーツの指導実践に関する科学的研究とその発展に寄与し、体育・スポーツの指導実践に資することを目的とする」ことが示されています。個々のスポーツ現場活動で得られる実践知、即ち帰納法的に個々の異なる事象から導かれる知は、私が専門とする臨床医学における知と類似する部分があると感じています。スポーツ現場で得られた1つ1つの正解が異なるn=1の実践知や経験知は科学的に検証され、証明される必要があります。それらの有用な実践知や経験知を、体育・スポーツの指導実践のための知識や技術として昇華し、より多くのスポーツ現場に共有される知見とするには一般化されることが不可欠だからです。しかし、科学的な知見が現場にもたらされるまでには多くの時間と労力が必要となります。また個々のスポーツ種目に適用することも容易ではありません。その一方で、個々の事例は時として大きな発見をもたらし、スポーツ現場を格段に進歩させる可能性を有しています。
 これらのことからコーチング学は、スポーツ科学とスポーツ現場を繋ぐ実践的な学問であることは自明でしょう。そして、今大会のテーマである「コーチング学と実践現場をつなげる ~長良川における汽水域の如く~」はこれらを端的に示していると言えます。まさしく朝日大学で開催される日本コーチング学会大会にふさわしいテーマであると感じています。
 今大会の成果が会員の皆様のみならず、国内外のスポーツ界に大きな成果をもたらすことを期待しております。結びにあたり、日本コーチング学会の益々のご発展と、本大会のご成功を祈念いたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。

大会長挨拶

日本コーチング学会 会長 尾縣  貢(筑波大学)

 2020年東京オリンピック・パラリンピックが終了し、予想を超える大きな波がスポーツ界に押し寄せています。競技力向上という普遍的な課題に加え、学校の運動部活動の大幅見直し、競技団体の自立、ガバナンスとコンプライアンスの強化、スポーツへのDXの導入、SDGsへの取り組み等の喫緊の課題が顕在化しています。いずれもがスポーツの発展にとっては解決すべき重要な課題であり、スポーツ界が総力を上げて取り組むべきものであると言えます。体育・スポーツの指導実践に関する科学的研究の発展に寄与し、体育・スポーツの指導実践に資することを活動の目的とする日本コーチング学会は、多様で学際的な分野を網羅しているため、先述の課題に幅広く取り組んでいくことができる数少ない学会であることを自負しています。
 しかしながら、国内のコーチング現場を見渡すと、いまだに「研究と現場のコーチングの乖離」が問題として残っており、研究をする側とコーチングを実践する側の互いの理解を深め協働していくことが望まれています。全国各地の研究者とコーチが多く所属する本学会がその架け橋的な役割を担い、研究知と実践知の融合を促し、その融合から創られた多様で有用な知見や情報を発信していくことも私たちの使命だと言えます。
 岐阜県瑞穂市の朝日大学で開催されます第35回学会大会のテーマは、「コーチング学と実践現場をつなげる ~長良川における汽水域の如く~」というユニークなものです。海水と淡水がうまく混ざり合い汽水になり、そこは多様な生命体が活発に活動をする場となる。コーチング現場は、長良川の汽水域の如くの有り様を目指したいものです。本大会が基調講演、研究発表、シンポジウム等を通じ、様々な立場からの情報発信や活発な議論の場となることで、汽水域の如くの場を創出し、それがコーチング学の発展につながることを祈念しています。                  
 最後に本大会の開催に際し、朝日大学の関係者の皆様をはじめ多くの方々にご支援ご協力を賜りましたことに心から感謝申し上げます。

実行委員長挨拶

第35回学会大会 実行委員長 梶山 俊仁 (朝日大学)

 2024年3月2日(土)・3日(日)の2日間にわたり朝日大学において「日本コーチング学会第35回大会」を開催させて頂き、また日本全国から美濃国・岐阜、朝日大学に学会員の皆さまをお迎えできることを大変喜ばしく思います。同時に初めての東海地区での開催となることから責任の重さを痛感いたしております。
 約1年間の準備期間でしたが、大会役員及び実行委員会の先生方、関係各方面の皆さまのご理解とご支援のもと大会が開催されますことに心から感謝を申し上げます。
 今大会は大塚学会大会委員長をはじめ多くの先生方から賜りましたご意見・ご要望を参考にしながら、シンポジウム、基調講演、口頭発表、ポスター発表、企業展示など多彩なプログラムを企画することができました。また共催特別企画・一般公開シンポジウムでは研究者、コーチ、学生、一般市民の皆さまなどより多くの方々にご参加を頂きます。それぞれの立場における日々のコーチング現場で大いに役立つ実践的な大会となるものと期待しております。
 今大会のテーマとして「コーチング学と実践現場をつなげる ~長良川における汽水域の如く~」を掲げました。日本コーチング学会HPの通り「研究と現場のコーチングの乖離」は古くて新しい問題であり、未だ根本的な解決をみたとは言えません。ダヴィデ像で有名なミケランジェロには「大理石の塊(原石)の内部に聖母は隠されている。私はそれを掘り出すだけだ」という伝説(神話)があります。これは一流のコーチだけが既に見えているダヴィデ像(真理)をコーチの勘(実践知)として帰納法的に集め一般化することで、言語化・可視化して共通の理解を可能にするのは、体育・スポーツに関わる研究者であると諭しているように思います。今大会が潮の満ち引きにより、栄養豊富で緩やかな塩分濃度勾配を擁す汽水域の如く、研究者とコーチが良い塩梅で混じり合い、その融合からコーチング学という学際的・横断的な知を扱う学問領域がより豊かになることを考える契機となることを願って止みません。
 朝日大学は4学部5学科の総合大学でおよそ3,000名の学生が在学しています。今大会運営組織の中心となる保健医療学部健康スポーツ科学科は2017年に誕生したばかりの新しい学科です。本学で体育・スポーツ・健康の分野で広く活躍、貢献している日本コーチング学会大会が開催されますことは、今後の本学部・学科の発展にとって非常に意義深いことであると感じております。
 最後に重ねてではありますが、今大会の開催に際し大変多くの皆さまにご支援ご協力を賜りました。本当にありがとうございました。今大会及び第36回以降に続く大会の成功と日本コーチング学会の更なる発展を切に願いまして実行委員長の挨拶とさせて頂きます。

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